今宵、君の翼で
「やってるわけないじゃんっ私なんて全然普通の人間だよ」
いや、普通以下かもしれない。
みんな私のことを可愛いとか美人とかよく言ってくるけど、私が裏でどんなことしてるのか知らない。
知ったらきっとドン引きする。
「でも俺は違うんだよね」
「え?」
「外見ってよりも、なんか惹かれるもんがあってさ」
「惹かれるもの?」
私も最初に翼を見たとき、目が離せなかった。
「そ。だから俺のものにしたいって思った」
そう。このビー玉みたいな緑色の瞳。
まっすぐに私だけを見つめる瞳。
「美羽、俺の女になっとけよ」
また、目が離せなくなった。
何もかもを見透かしているようなこの目に、吸い込まれたくなった。
私は素直に頷いて、翼のキスを受け入れた。
ベージュ色の前髪が私のおでこにくっつく。
何度も、何度も。
こんなに優しいキスは初めてだった。
初めて誰かに心から必要とされた気がした。