今宵、君の翼で
胸が苦しくなって、泣けてきた。
翼が辛い思いしてるのなら、分かち合いたいと思う。
でも翼はどう思ってるのかな。
ずっと黙ったままだし……
「私、頼りない? 翼の役に立てないのはわかってるけど……少しでも翼のこと知りたいの」
「美羽は綺麗だから汚したくねぇんだよ……」
「え……」
私を見つめたその目のほうが、綺麗すぎると思うんだけど。
「この世界は汚すぎる。だからお前には正直見せたくねぇ。傷ついてほしくねぇんだ」
「そんなこと! 私は翼が好きだからっ本当に大好きだからっ翼の痛みも苦しみも全部知りたいんだよっ! 怖くないって言ったら嘘になるけど……でも覚悟はできてる。だから……話して欲しいの」
翼はしばらく私のことを見つめた後、ゆっくりと抱きしめた。
「この前……Phoenixの幹部に拾われてこの世界に入ったって言ったじゃん? そのとき約束させられたんだよ。面倒見てやるかわりにしっかり働けってね。上から指令がきたらどんなことでも引き受けなきゃなんねぇんだ。それがどんなに危険なことでも」