今宵、君の翼で
「危険なことって?」
「他の組のもんの引き抜きに付き合わされたり……色々な。とにかく俺は良いように使われてんだよ。情けねぇけど」
「そんな! なんで翼が!?」
「何回か逃げようとしたけど……その度に連れ戻されてさ。もう俺はあいつらからは逃げられねぇんだよ」
言葉が出てこない私を見て、フッと笑った。
「怖くなったっしょ? こんな奴なんかと付き合いたくねぇって思った?」
圭祐が言っていた。
背中の傷のこと。
それってやっぱり……
「そんなこと聞いても翼に対する気持ちは変わらない。でも、翼が辛い目にあってるのは嫌だ! その人たちから暴力受けてるの!?」
翼がふっと目をそらす。
今まで目をそらされたことはなかったのに。
本当なんだ……
本当に翼はその人たちに……
私は翼の服をめくった。
「急になにすん……」
一瞬にして心臓が凍った。
翼の背中には数え切れないくらいの傷跡が残っていた。
古傷もあれば、新しいまだ治っていない傷まで。
痛々しくて、見てられないくらい。
「これ、その人たちにやられたの!?」
翼は黙っていた。
でもそれが答えなんだろう。
「こんなの……ひどすぎるっ」
涙が止まらなかった。
翼はお父さんから虐待されていたと言っていた。
古い傷はそのときのものだと思う。