今宵、君の翼で
「こんな俺だけど……ついて来てくれんの?」
「うん……」
「引き返すなら今だけど」
「無理だよもう……翼がいなきゃ無理……」
少し離れてみてわかったこと。
いつの間にか、私の中で翼の存在が大きくなっていたんだ。
それがなくなって、空っぽになっちゃった私は、魂の入っていないただの入れ物のようだった。
そう、あの時と似ている。
お兄ちゃんが死んだ日。
私はあまりにもショックで、涙も出なかったっけ。
でも泣きたくなかった。
泣いたらお兄ちゃんの死を認めちゃうような気がして。
「美羽……ありがとう」
翼の腕の中は暖かい。
私はこの人を幸せにしたいと、この日心に決めたんだ。
お兄ちゃんは守れなかったけど……翼のことは守ってみせる。
だからお兄ちゃん。
どうか私に力を貸して……?
「翼……私、翼とならお兄ちゃんに会いに行けるかもしれない」
「お兄ちゃん?」