今宵、君の翼で
「うん。去年突然死んじゃったの。私のお兄ちゃん……でも、死んだことを受け入れられなくて今ままで一度もお兄ちゃんのお墓に行ったことなかった。私、今なら……翼となら一緒に行けるかもしれない」
「マジか……辛かったな。兄貴と仲良かったのか?」
「うん。出来過ぎのお兄ちゃんとは何でも比べられたけど……お兄ちゃんは私の1番の理解者で、味方だったんだ」
「へぇ……なんか悔しいな。今は俺が美羽の1番の理解者でいたいけど」
そう言って抱きしめる腕に力を込めた。
苦しいけど、心地よい苦しさ。
「でもさ……兄貴も悔しかったと思うけど。急に自分がこの世から消えるなんて思わなかっただろうし。そんで大好きな妹にも死を受け入れてもらえなくて……辛いんじゃねーの?」
ドキッとした。
確かに私はお兄ちゃんの死から目を背けてた。
お葬式の時も必死に違うこと考えてたし。
気がつくと、いつもお母さんが泣いていた。
それを見るのが嫌で嫌で……私は家を出たんだ。
私は現実から逃げていた。