今宵、君の翼で
「よし……兄貴の墓に行くか」
「ついてきてくれるの?」
「あたりめーだろ。ちゃんと兄貴と話してこいよ。そんで、かっこいくて頼もしい彼氏ができたって紹介しといて?」
しんみりとした会話だったのに、翼は偉そうに微笑んでいて、私はプッと笑いがこみ上げた。
翼のこーいうところ、好きだな……
私は再び翼のことを抱きしめた。
翼の匂いも大好き。
初めて会った日、私に貸してくれたパーカーから香ってきた匂い……
私の好きな海の匂いにも近い。
ずっと一緒にいようって。
もう離さねーって。
この日翼は私にそう言ってくれた。
それなのに……
彼は嘘をついた。