今宵、君の翼で
翌週の土曜日。
私と翼はお兄ちゃんのお墓へ行くことになった。
少し遠くて、バイクでも1時間くらいかかるところ。
でも翼は嫌な顔一つせず、行くと言ってくれた。
その気持ちがすごく嬉しかった。
「ああそうだ。墓行く前に先輩んち寄ってもいい?」
バイクの後部座席に座った瞬間、翼が私にそう聞いてきた。
「もちろん、いーよ?」
「借りてたゲーム返せってうるさくてさ」
翼、ゲームなんてするんだ。
そういうところは普通の男の子だよね。
私と一緒にいるときは明るくて笑顔が絶えなくて優しい翼。
でも……
チームのみんなといるときの翼は別人のような顔をする。
私の知らない表情、しぐさ。
翼が遠いところに行ってしまうんじゃないかって、時々怖くなるんだ。
翼の先輩の家は一軒家で、結構豪邸だった。
だって門から玄関までが遠くて遠くて……
でかくて怖そうな犬も3匹ほどいた。