今宵、君の翼で


四条さんは私の事を強く抱きしめた。


「こんなんされてもまだ信じる?」


私は四条さんの胸の中で頷いた。


「フッ。本当バカだ」


なんでこんな私に優しくしてくれんの……


だめだ、シホ先輩がまだ四条さんの事好きかもしれないのに。


それでも私の体は動かなくて、四条さんの胸でしばらく泣いてしまった。




こんな一瞬の出来事が、後悔するとも知らずに。






目を開けたとき、全身の血の気がひいた。


シホ先輩が呆然とつっ立って、私の方を見ている。


「あ、シ……シホせ……」


次の瞬間、シホ先輩は踵を返して走って行った。


私は思わずそのあとを追った。


どうしよう……勘違いされちゃったかも!!



「シホ先輩! 待って! 聞いてくださいっ違うんですっ!」



そう叫ぶと、シホ先輩がその場に立ち止まった。


お互い息を切らしている。

ゆっくりと私の方を見たシホ先輩の顔は笑っていて。



「ごめん、思わず走っちゃったわ」


「い、いえ……あの、さっきのことですけど」


「あー、抱き合ってたとこ? うん……びっくりしたけど。別に気にしてないよ? 元彼だし……」



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