Heaven~第ニ章~
「此処だ」


まだ心の準備も出来ていないのにコンコンとドアをノックしてしまう。


「はい」


控室から女性の声が返ってくる。


「獅朗です」


ガチャと開いたドアからは和服姿の女性。


「獅朗、遅いわよ」

「すみません」


獅朗が誰かに頭を下げるなんて驚いた。
だけど、驚いたのはそれだけじゃなかった。
その女性が私に気付くと「そちらが椿さん?」と私を知っていたから。


「あっ、はい。愛川椿です。始めまして」

「獅朗から話は聞いてるのよ。あなた、獅朗と椿さんが……。中へどうぞ」

「あっ、はい」


中へ入るとソファーに座って居た男性が「いや、可愛らしいお嬢さんだね」と立ち上がり私に近づいてくる。


「始めまして、愛川椿です」

「獅朗の父親の久辺幸則です。家内の小百合です」


頭では分かっていた。
蓮沼からの情報で獅朗の本当の父親ではないと言うこと。


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