Heaven~第ニ章~
「んなこと言って、樹里に言い付けるぜ」

「冗談だよ。タクシーで帰るよ」


樹里って子がマサの彼女なんだろう。
二人のやり取りを見ていて、少し安心した。


ここにいる獅朗はちゃんと何時もの獅朗だ。


「じゃあ、着替えも渡したし帰るから」

「あっ、ありがとう。着替え」

「どう致しまして」


マサが帰って行く後ろ姿に「優しい修羅も居るんだね」と呟いた。


「まぁ、修羅は元々正義を司る神だったからな」

「え?修羅って正義なの?」

「俺も詳しくはねーけど、正義だと分かっててもそれに固執すると善の心忘れちまって悪になるんだと。あの修羅はマサが自分自身への戒めだ」

「戒め……」

「ほら、椿も着替えて来いよ」


獅朗に渡された着替えを手にしてトイレへ向かった。


戒め……か。
マサのあの修羅にはどんな戒めの意味があるんだろうか。

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