Heaven~第ニ章~
一度知ってしまった人の優しさや温もりはそう簡単に忘れるはずがなかった。

本当はずっと一人で我慢していた。
どんなに淋しくても……
どんなに切なくても……

そんな箍を外したのはお酒の力と獅朗の優しさだったのかもしれない。


「今日の椿は饒舌だな」

「誕生日だからね……」


瞳を閉じソファーに持たれながら答えた。
 

「眠いのか?」

「眠くないよ……」

「眠くないよって、その状態で言っても説得力ねーな」


隣で獅朗が笑っている。


「帰るか?」

「ん……」

「帰したくねーんだけど、」

「ん……」

「どっちなんだよ」


隣で獅朗がまた笑った。

良かった。
獅朗が笑って今日を終えることが出来て……――

だんだん遠く聞こえて行く獅朗の笑い声に安心した。


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