先生に、あげる。


「今日は、ここに泊まるよ。
どうにか出来ないか、先生に頼んでみるから。」


僕が言うと、咲織は僕の手を掴んだ。

その強さに僕は驚いて振り向く。


「徹さん。
今日だけじゃなくって。
明日と、明後日と、次の日と、あとその次の日と、ねぇ、ずっとここにいて。」


僕の手を握りしめる。


「お願い…。」


僕もその手を握り返した。


「当たり前だよ。
ずっと一緒にいようって、約束したじゃないか。」


そして、二人で、泣いた。


これが、彼女の後にも先にもない、わがままのひとつだった。
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