先生に、あげる。
咲織は前を見たまま歩いてる。




「好きな人なんて…」




そこまで言って、僕は言葉に詰まった。
好きな人は出来たことない。




彼女がいたことはあるけど、それは高校時代よくある、成り行きとやらで、ノリで付き合ったようなもの。




「いや、わかんないなぁ。」


僕がそういうと、咲織は急に僕の方を向いて、大きな声で言った。


「私は!私は…います。
…好きな…人。」



僕はその頃あまりに無知で、特に女性の心については、なぜ、咲織がこんなに顔を真っ赤にしてるのかも、必死になってるのかも、よくわからなかった。
< 18 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop