殺人鬼と私


 地下街はどこか名もなき街に似てた。そこら中にある蜘蛛の巣。カビた壁と床。ボロボロになった天井。たくさんのゴミ……でも、違った。

 ここには血の匂いがしない。


 「ミラベルさん、ここですよ」


 ロムスが足を止めたのは周りより明らかに汚いドア。腐って読めなくなった表札らしきものがかけられている。

 
 「そのメガネを作った人の家?」


 「えぇ、じゃあ入りましょうか。おじゃまします」


 足を踏み入れるとホコリが舞った。孤児院を思い出す。


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