お隣さんはイケボなあなた
久志は元気だろうか。
仕事を頑張っているだろうか。
彼が言う、好きな人とは……どうなったのだろうか。
かつて自分を振った男の様子を知りたいのは、女子特有の気持ちかもしれない。
そう思うと少しだけ、気は楽になるけれど。
矢嶋さんという好きな人ができたのに、なんだか元カレを気にしている自分が、惨めになってしまう気持ちもある。
こんなモヤモヤした気持ちは、きっと、新しい恋人でもできて幸せにならない限りは、晴れないんだろうな。
かといって、矢嶋さんに告白する気にはなれないけれど。
「今は仕事、仕事」
千紗は、目の前の書類にもう一度目を通してから、大きく気合を入れた。