お隣さんはイケボなあなた
ちょっとした事件が起きたのは、それから何日か後だった。
「藤永さんってどなたかしら?」
総務に顔を出したのは、スラリとした背の高い、目尻の色っぽい女性だった。
「これはこれは、斎藤課長! どうされたんですか」
うちの課長が、慌てて席を立ったのを見て、千紗はその相手が、例の大阪から来た営業課の課長だと気づいた。
「二度言わせないで。藤永さんってどなた?」
くるりと部署内を見回すと、ちょうど千紗と祥子の辺りで視線を止めた。
千紗は、おそるおそる手を上げる。
「わたしですけども……」