お隣さんはイケボなあなた

ちょっとした事件が起きたのは、それから何日か後だった。


「藤永さんってどなたかしら?」


総務に顔を出したのは、スラリとした背の高い、目尻の色っぽい女性だった。


「これはこれは、斎藤課長! どうされたんですか」


うちの課長が、慌てて席を立ったのを見て、千紗はその相手が、例の大阪から来た営業課の課長だと気づいた。


「二度言わせないで。藤永さんってどなた?」


くるりと部署内を見回すと、ちょうど千紗と祥子の辺りで視線を止めた。

千紗は、おそるおそる手を上げる。


「わたしですけども……」

 
< 134 / 290 >

この作品をシェア

pagetop