お隣さんはイケボなあなた
斎藤と呼ばれた女は、上から下まで千紗を観察すると、クスッとあざ笑うような表情をした。
「もういいわ」
「え?」
「は、はい? 斎藤課長、藤永がどうかしましたか?」
うちの課長が慌てて駆け寄ると、斎藤は唇の端を上げたまま首を振った。
「向こうで噂を聞いてたんだけど、もう気がすんだわ」
彼女はそう言うと、くるりと向きを変えて去っていった。
どういうことなの。
何がなんだかわからない。
向こうって……。
もしかして大阪のことなの?
それとも、営業課のこと?