お隣さんはイケボなあなた
色々頭に浮かぶけれど、見当がつかない。
久志は、会社の人には、あたしのこと話したりしないだろうし。
他に噂になるようなことなんて、した覚えはない。
「藤永さん、なんかしたの? きみ」
課長がおでこにたくさん汗をかきながら、千紗に聞いてくるが、本当に思い当たるフシがないのだ。
「何にもしてない、つもりなんですけど……」
祥子も珍しく心配そうに顔を覗き込んできた。
「藤永さんも、もしかして、社長の愛人なんて、オチないですよねぇ?」
小声でパソコン越しにそう聞いてくる。
「そんなわけないでしょ」
千紗は思わず眉をしかめた。