お隣さんはイケボなあなた




久志が大阪に行ってから、連絡を取ったのは一度だけ。

千紗からメールを送った。


―― 部屋にある、久志のCD、どうする? ――


それは二人が好きだった「キャロル」のアルバムだった。

千紗が持っていないと言ったら、貸してくれたのだ。

すぐ返そうと思っていたはずなのに、返しそびれていたらしい。

本棚の隅に並んでいるのを見つけて。

散々迷ったあげく、メールをしたのだった。

もう連絡なんか取りたくないのかな、と千紗が諦めたころ、彼は何日かたってから返事を返してくれた。


―― 捨てて ――


その短い一言だけのメールに、どれだけ心を痛めたことか。
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