お隣さんはイケボなあなた
10 突然
「わぁ、見てください! 魚が泳いでますよっ」
千紗は思わず指をさして子供のようにはしゃいでしまう。
「矢嶋さん、ほら、見て」
振り返ると、彼は笑いを我慢しているようだった。
「……はしゃぎすぎですか?」
千紗は、周りを見回しながらそう言った。
だれもこっちのことなんか気にしてはいなそうだったけれど。
よく考えたら、水族館なんだから魚が泳いでいて当たり前だ。
「いや、千紗ちゃん、ほんと可愛いなって思って」
矢嶋はそう言いながら、まだ笑いを我慢している。
きっとあの顔は、またワンコ扱いしているんだろう。
尻尾ふって喜んでる、って思われてるのかな。
千紗は見透かされているようでちょっと悔しくなった。