お隣さんはイケボなあなた
斎藤課長の真っ直ぐ刺すような視線を見ているうちに、千紗は身体に力が入っていくのがわかる。
緊張していたのだ。
おかげで、待っている間、シュミレーションしていた言葉は、いつの間にかどこかに飛んでしまっていた。
「あの……あたし……」
なんて言えばいいんだろう。
一瞬、そんな間抜けな考えが頭をちらつく。
だって、きっと、この人には何を言っても通じない気がする。
千紗は、唇を噛み締めた。