お隣さんはイケボなあなた
何も言えずにいる千紗を見て、斎藤課長はため息をついた。
「仕事ではもう少し骨のある態度、取ってちょうだいね。じゃぁ、明後日お待ちしてるわ」
彼女はそう言うと、コツコツとヒールを鳴らしながらビルのドアから出て行ってしまった。
気が抜けたのか、ホッとしたのか、思わず千紗はふらつきそうになる。
なんでこんなに、あの人に気圧されてしまったんだろう。
ちゃんと断るはずだったのに。
いつの間にか、こぶしまで握りしめて、手のひらには爪の後がいくつか残っていた。