お隣さんはイケボなあなた
気分転換といいながら、ベランダに何度も出たけれど、会うことはなかったし、メールをくれなかったのは、矢嶋の方も同じだ。
「この間、また連絡しますねって言ったのは、千紗ちゃんでしょう」
「そ、そうですけど……」
なんだか言いくるめられてしまう。
1通り突っ込み合いをしたあと、矢嶋は壁にかかった時計を見上げた。
ティーカップを手に取るとキッチンの方へ向かう。
「さて、今日はもう遅いから、部屋、戻ったら?」
「あ、はい……」
久々に話せて楽しかったのに。
千紗が、少ししょんぼりしたのを見て、矢嶋が、呟いた。
「そんな顔してると、帰したくなくなっちゃうから」