お隣さんはイケボなあなた
♢
「おはよう」
朝、駅からの道、後ろから声をかけられた。
斎藤課長だった。
「おはようございます」
頭の片隅に、昨日のことがちらりとよぎる。
でも、千紗は、肩で息をして整える。
もう切り替えていこうって、決めたんだ。
そう思うと、まっすぐ彼女を見ることができた。
これも矢嶋が、励ましてくれたおかげだろう。
「昨日は悪かったわ」
斎藤課長は、コツコツとヒールを鳴らしながら、千紗の隣に並んでそう言った。