お隣さんはイケボなあなた
千紗は慌てて首を振る。
なんで電源を切らなかったんだろう。
せめてマナーモードだったら良かったのに。
20回近く、呼び出しされただろうか。
ようやく電話は静かになった。
「何かあったの……?」
「ううん。大したことじゃないんです」
千紗は、テーブルの上に乗せて組んでいた両手を握りしめた。
今さら、久志が何の用で電話をして来たんだろう。
月曜まではこっちの会社にいるのは分かっていたけれど。
こんなにしつこく電話を鳴らすことなんて、付き合ってる当時ですらなかったのだ。