お隣さんはイケボなあなた
「全部、話してみて?」
「でも、矢嶋さんの話……」
「それはいつでも話せることだから」
彼はそう言うと、千紗の両手を自分の大きな細い手で優しく包んで、にっこり笑った。
千紗は、泣きそうになるのを堪えながら、静かに頷いた。
久志と一年付き合っていたこと。
転勤を気に、別れを伝えられたこと。
それに、祥子から聞いた、浮気していたという話。
ぽつりぽつりと、言葉を選んで、矢嶋に説明をする。
彼は黙ったまま聞いていた。