お隣さんはイケボなあなた

「分かりました! もうこれが終わったらたくさんデートしましょ!」


半分やけくそになって、千紗はそう言った。

本当は、二人を会わせたくなんてないし。

それにこういう場に、付いてきてもらうこと自体、ちょっとアレだと思う。

意気地なしというか、空気読めないというか。

いかにも、弱い女を演じているみたいで少し嫌だった。

でも、その反面、久志を目の前にして、はっきりと何かを言える気もしなかった。

付き合っている時からそうだったが。

久志の強くて真っ直ぐな視線を前にすると、なんだか気後れしてしまうのだ。
< 272 / 290 >

この作品をシェア

pagetop