お隣さんはイケボなあなた
「え、呼び出しておいて、何それ? なんなん?」
久志は、千紗の前にドカッと座り、のけぞった。
呼び出したのって、あたしだっけ?
なんて、千紗はどこか冷静になってしまう。
そうだ。
よくよく思い出してみれば、彼は気に入らないことがあるとそんなふうにすぐ、感情をあらわにすることがあった。
なんで忘れていたんだろう。
思い出が美化されるってこういうことなのかな。
「こちらは、矢嶋さん」
千紗は、久志の態度なんか気にしない、といったように、明るく答えた。
もちろん、自然にそうなったのだ。
矢嶋が隣りにいてくれるからだろう。