お隣さんはイケボなあなた
「行くわけねーだろ? おい、千紗。こいつ人のことバカにしてんのか」
明らかに腹を立てた様子で、久志は食ってかかってくる。
彼のその様子を見ているうちに、千紗はなんだか悲しくなってきた。
本当は会って、彼が二股をかけていたのかどうか、確かめてスッキリするつもりだった。
精算してから、矢嶋と付きあうつもりだった。
なのに、こんな久志の姿を見てしまうと、浮気をされていたとか、どうでも良くなってしまう。
むしろ別れて正解だという気持ちまで湧いてくる。
「お前さぁ、もしかして、あれか? 別れるときあんなあっさり受け入れたのって、すでにこいつに乗り換える気だったからか? それとも、二股でもしてた?」
久志のその言葉は、ガツンと痛みを受けたような、目の前が真っ暗になりそうなくらいの衝撃だった。