お隣さんはイケボなあなた
「少しはスッキリできた?」
店から出てしばらく黙ったまま歩き続けて、ふっと、急に矢嶋が千紗の手を強く握り返してくる。
そうされて、ようやく、千紗は立ち止まった。
矢嶋の言葉に、千紗は、口を尖らせる。
「スッキリどころか、腹が立ちました。なんてあんな男と付き合ってたのかな」
思いっきり眉をしかめた千紗の顔を見て、矢嶋は笑う。
「怒ったらお腹すいたでしょ」
「すきました、もうめちゃくちゃお腹すきましたっ」
「じゃぁ、なにか食べに行こ」
矢嶋は、楽しそうにそう言って、千紗の頭をぽんっと叩いた。