お隣さんはイケボなあなた
千紗は玄関の扉を閉めて呟く。
「いい人そうで良かった」
紙袋の中を覗くと、茶色い四角い箱が入っていた。
「これ、ハーツのチョコじゃない?!」
そう、中に入っていたのは、最近ちょっと有名なお店のブランドのチョコだった。
おしゃれな箱と、かわいいデザインのチョコ。
チョコについているネーミングも変わっていると、会社で内海祥子が言っていたのを覚えている。
いまどき、引っ越しの挨拶をしてくれるのも珍しいというのに、こんなおしゃれなチョコを持ってくるなんて。
「ちょっとキザ?」
マスクをしているところも思い出して、千紗は少し笑ってしまう。
でも、気になることが一つだけあった。
――あの人と、どこかで会ったことあるかな?――
なんとなく、そんな気がして……。
それは出会いの予感だった。