お隣さんはイケボなあなた
 
そんな慌てた千紗の様子を見て、男はいじわるそうに返す。


「チョコレートそんなに気に入っていただけましたか」

 
相変わらずマスク越しだったが、その声の調子を見ると怒ってはいなそうだった。


「美味しかったもので……ハーツのチョコは、女の子ならみんな好きですよ」


思わず、千紗は、勢いよく正直に答える。

少し大げさすぎたかな、と後悔しかけたとき。


「喜んでもらえて何よりです」


彼はにっこり笑った。

優しそうに笑うんだな。

千紗は男の目を見て、そう思った。

ふと、彼の手の中に、見覚えのあるジャケットのCDが。


「あっ、それ……」
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