お隣さんはイケボなあなた
すぐにスマホが鳴った。
『じゃあ七時頃、うちに来てください。待ってますね』
ん?
その文章に、千紗は少し違和感を覚えた。
「待ってる、って。取りに行けばいいのかな?」
そう、この時の千紗は、頭の中でタッパーか器に入った、いくらを想像していた。
◇
それが違うと分かったのは、チャイムを鳴らして、玄関を開けた矢嶋を見たときだった。
「いらっしゃい。どうぞ、あがって?」
矢嶋は、そういうと、スリッパを指差した。
「えっ、あ、はい」
千紗は、慌てて言われるまま、玄関の中へと入る。
どういうことだろう。
いくらを渡すくらいなら、ここでも十分だけれど。