お隣さんはイケボなあなた

「あの……もしかして、矢嶋さん。夕飯用意してくれてたりしますか?」


おそるおそる千紗が、そう聞くと、彼は笑って言った。


「ああ、ごめんごめん。ちゃんと言ってなかったよね。

正直に言ったら、断られちゃうかなって思って」


やっぱり。

千紗は慌てて立ち上がる。


「ごめんなさいっ。あたし気づかなくて! 

何にも用意してないですよっ」


食事を用意してくれているなんてわかったら、美味しいお酒でも買って持ってきたのに。

察しが悪すぎる。

千紗は、そんなこと思いもしなかった自分に、思いっきりへこみそうだった。

そんな千紗を見透かしたように、矢嶋は寂しそうに言った。


「ごめんね。逆に気を使わせちゃったかな?」

「あ、いや、夕飯ごちそうしていただけるなんて、嬉しいです! 

けど、気が利かないなあ、あたしって……」


矢嶋は、首を振った。
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