お隣さんはイケボなあなた

「今日の僕は、無性に料理がしたい気分で。それに君が巻き込まれただけだから。気にしないで」

　
その優しい口調に、思わずきゅんとしてしまう。


「さ、出来たから食べよう。ぜひ感想聞かせて」


そう言いながら、お盆を手に、矢嶋はキッチンから出てくる。

男の人の手料理。

そんなものを食べたのは初めてだったし。

何より、その豪華さにびっくりした。

いくら丼に、天ぷら。茶わん蒸しにお吸い物。

そしてお新香。

この定食並みのお膳を目の前にして、千紗はただひたすら感動してしまう。


「なんで、なんでこんな美味しい天ぷらが揚げられるんですか？」

「え、この茶わん蒸し、すごい出汁が効いてて美味しいんですけど」

「うわあ、お吸い物も優しい味がします」


なんて、次から次へ、どんどん溢れてきてしまう。