お隣さんはイケボなあなた
千紗は、聞き間違いかと思って、思わず顔を上げる。
「藤永さん、可愛い」
「えっ……」
突然のことで、ドキドキしすぎて、呼吸をするのも忘れそうだった。
可愛い、だなんて。
お世辞にもほどがある。
千紗は動揺しすぎて、なんて返せばいいか分からなくなった。
「ほんと、可愛い。ワンコに餌付けしてる気分」
矢嶋は、そういうと、今度はぷっと吹き出すように笑った。
いじわるを彼が言ったのに気づき、千紗は思わずむくれた。
「も、もうっ、ワンコって!」
でも……。
本当に、餌付けされちゃったかも。
料理がうまいイケメンだなんて、なんだかずるい。
千紗は、止まらない心臓を落ち着かせようと、もう一度ため息をついた。