お隣さんはイケボなあなた
「それにしても、荷物少ないんですね」
千紗は、コーヒーを受け取ると、部屋の中をぐるりと見渡した。
あまりジロジロ見るのも失礼かな、とは思いつつそこは一部屋だからしょうがない。
ベッドにソファー、それに大きなCDラック。
あとはミニコンポとノートパソコンがあるだけで、テレビや大きなチェストのような物は見当たらない。
「引っ越してくるときにほとんど処分したんだ。必要最低限でも生活できるかなって」
矢嶋はいつものように笑いながら答えた。
けれど少し寂しそうな表情を浮かべたのは、気のせいだろうか。
「シンプルで掃除もしやすそうだし、いいんじゃないですか? それにあのカーテン!」
千紗は思わず指をさした。