流れ星に４回目の願いを呟く時。
　家に帰り着いた頃には、もう夜は訪れていた。


　疲れてボロボロになった心と身体を休めようと、ベッドに深く潜り込んだ。


　薄い夏布団を顔まで覆い隠し、未だ少し腫れた目をゆっくりと閉じた。


　冷たいシーツの中に、蘇るのはマサヒロとの日々では無く、カケルの笑う顔だった。


　それを思い出すと、何故か涙は留めなく流れ続けた。


　眠りたくても、眠れなかった。


　目の奥に浮かぶカケルの顔はまるでそれが目の前にあるように私の方を向いて笑っていて、そこへ少しでも近付こうとすると、静かに音も無く消えてしまう。


　それは夢では無いのに、儚くて、切なくて、悲しい幻影。


　目を閉じるたびに、それは繰り返され、私はそのたびにずっと、冷たい涙を流した。


「ごめんね。ごめんね。カケル。」


　夜は永く、もう明けることは無いように思えた。


　昔の自分みたいに、無理に笑って見せようとしたが、出来なかった。


「っ、ふふ。全然、眠れないね。」


　何かを必死に消し去ろうとするように、震える唇を強く両手でこすった。




< 126 / 210 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop