流れ星に4回目の願いを呟く時。
「ただいまー。」


 疲れた顔を浮かべて娘が帰って来た。再放送はもう終わり、心地よい春の陽気のもと夫は早過ぎる昼寝に興じていた。


「土曜窓口に行ったけど、うちじゃ出来ないって言われて。」


「じゃあ、どうするの。」


「役場が駄目なら多分、県庁かな。」


「はあ?県庁?遠いわよ。それに今日は土曜だし、相当混んでると思うけど。」


 母の淹れてくれたお茶で喉を潤し、少し体力は回復した。


「いや、前に申請した時も同じで役場じゃ出来なくて。でも奈留早は合併してたから市役所があって近かったんだけど。」


 さっきの渋滞を経験しているのだ。正直なところ、県庁は行きたくない。まあ、社会人なのだから、面倒なことばかり積み重なるのが多いことはよく知り得ている。


 しかし、母が一筋の光を照らしてくれた。


「あら、うちも市役所有るじゃない。あんた知らないの。そっか、そんな話はしてなかったわね。一昨年だったか、去年だったかに合併して町名は残っているけど、うちも市になったのよ。たしかほら、あんたの同級生の一人が名前を決めたのよ。あんた役場でマスコットキャラのスーミン見なかったの。」



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