流れ星に4回目の願いを呟く時。
 いざ会えば何を話そう。そんな心配ばかりしていたのだが、案外すんなり口が開いた。


「結婚、おめでとう。」


 何はさておき、これだけは言わないと。ずっと心の中で練習していた言葉だった。


 そう言うと、真貴子は一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐに返事をした。


「ありがとう。急で驚いたでしょ。」


 驚いたに決まっている。10年以上も音信普通だった初恋の彼が、感動の再会を飛び越えて、急に同級生と結婚するという。


「うん。本当に。驚いた。」


「ごめんね、言ってなくて。ホタルとは仲が良かったから、なんだか、言うの恥ずかしくて。」


 そう言いながらコーヒーカップに手を伸ばす真貴子の姿は、どこか婚約者としての風格が漂っているようだった。


「そっか。真貴子とも、本城くんとも全然会えてなかったから、本当に、手紙貰った時は、うん、嬉しかったな。」


 私は何か、心の奥底から這い出ようとするものを圧し殺すように、ニコっと、笑って見せた。




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