流れ星に4回目の願いを呟く時。
 真貴子は一度ちらっと店主の方に目をやって、まだ来たばかりのコーヒーのグラスに手を伸ばした。そして、ゆっくりと、濡れた真っ赤なルージュの唇が開いた。


「誰か、女子にでも聞いたの。」


 私は頭を2度横にふった。


「じゃあ架、いや。……見られてたか。」


 私は真貴子の顔をずっと、見ていた。


「そうよ。あれは私がやったの。」


 その言葉に、私は何故か安堵していた。まず一歩踏み出せた。その安心感に今まで何かで締め付けられていた胸のその1つが外れたような気がしたから。


「あれは、そうね。確か中学3年の、ふふ。そう、今くらいの季節。もうすぐ本格的に梅雨に入る頃だったわ。」


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