流れ星に4回目の願いを呟く時。
1. 思春期のスイッチ
水溜まりはいつの間にか凍ってしまっていた。その上をバスはゆっくりと走る。
暖かい毎日が当たり前で、朝起きるのがあまり苦では無かった町から、この身の芯まで凍てつく町にやって来て、もう何度目かの冬が訪れている。
この町での生活もわりかし楽しいが、社会人になってからの日々は格闘の毎日である。
「何もわざわざ山奥の田舎に就職しなくても良いんじゃないの」と、母は最後の最後まで言っていたけど、言うことを聞いておけば良かったかなと、今更ながら実感する時もある。
それでも、バスの車窓から見える白い世界には、理由も無く魅入ってしまいそう。
結婚するまでは暖かい町で育つものだと、当たり前のように思っていたのは自分では無く、本当は両親だったに違いない。
山崎ホタル、25歳。私は夏に産まれた。