流れ星に4回目の願いを呟く時。
 もう誰も信じられない。しかし、諦めかけた時に、奇跡のような自然現象は起こるものである。


 数時間前まで騒がしかった学校は静まりかえり、茜色が群青へと混ざろうとしているその時、窓から見上げた空に、一筋の光がシュッと流れた。


「どうしたんだ、山崎。」


 思春期のスイッチがグイと入った。


 眠っていた人形に、命が吹き込まれたように、体の中に電流が走った。それは脳から脚の指先を僅か0カンマ数秒で駆け抜けるような感じで、若く肉厚の無い心臓を一瞬で貫く。


 カケルだった。


「いやあ、ちょっと忘れものしちゃってさ。本城クンこそどうしたの。そんなに慌てて。」


 ユニフォーム姿の彼を間近で見たのは初めてだった。汗で学校のロゴは濃くなり、肩で息をしている。思ったよりも広い肩幅、引き締まった太もも。思わず体が熱くなる。


「なんだ忘れ物か。てっきり、いや。」


 カケルは一瞬口どもったが、続けた。


「山崎、最近女子たちになんかされてるみたいだったからさ。泣いてるかと思った。」












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