流れ星に4回目の願いを呟く時。
 この町での冬を凌ぐには、カイロは必需品なのだけど、困ったもので、カイロは直ぐには温かくはならない。


 封を開けて、クシャクシャとしてから家を出て、ポケットにでも入れて少しの間一緒に過ごしていると、気付けば温かくなっているものだ。


 それと同じように、奈留早町の人々も実は根は温かったりする。でもやはり、初対面の人からの冷たい通過儀礼には未だ慣れない。特に冷えて空気が澄み切った、寂しくも美しい月夜に冷たくされると凄く落ち込む。


 そんなときには必ずと言って良いほど、あることをする。流星を探すの。


 奈留早町には面白い迷信がある。流星は雨を降らせる神様のお告げであり、見た人の願いが一つでも叶うと、御告げとして、その次の日に必ず温かい雨が降ると言う。


 信じている人はもう少ないらしいけど、流星と言えば願いごとをするためのもの。1日の嫌なことを忘れさせてくれるのを願っても良いでしょと、私は少しズル賢い野心を胸に空をいつも見上げる。


 そのせいもあってか、不思議なことに、この町は雪は降っても、雨がなかなか降らないのだ。


< 5 / 210 >

この作品をシェア

pagetop