私の小さな願い事
脱走
夜になり、静けさの中
廊下に出る
今日は、満月か…
月を見上げ、慶喜様との幸せだった日々を
思い出すが、今は子供の命を狙う人でしかない
慶喜様の部屋まで行ってみた
「早く依里を始末しろ!」
慶喜様の言葉を聞いて、未練がなくなった
部屋に戻り
男物の服と着物、多津が用意してくれていた
子供の服とおしめ
そして、書いた手紙も荷物に入れた
目指すは、隠密の訓練で、使った空き家
ここから、そう遠くないけど
人が入れないようにしてある
訓練用だから
あそこなら、子供の泣き声も気にする者がいない
子供を産んでから、江戸に行こう
隠密の訓練を受けてよかった
優に捕まえられるくらい
鈍くさかったのに
私は、無事に空き家についた
ドクドクと心臓が落ち着かない
怖かった
見つかれば、殺される
逃げ伸びた安堵感より、殺される恐怖心が
勝っていた
お腹を擦り
「もう、大丈夫よ
私が守ってあげるからね」
心が落ち着く頃には、朝日が昇っていた
安心と疲れが一気に襲い
うとうと
少し寝よう…