私の小さな願い事
~多津~



なぜ、慶喜様が私を引き離したのか

その答えは、すぐにわかった


女中が慶喜様に


依里様の毒殺に失敗したと報告に来たから

食が細くてよかった



明日の朝、また決行するとのこと



なんとか依里様にお知らせ出来れば…


そう思い、夜中に依里様の部屋へ





いない……





狼狽えてはいけない

落ち着いて…… られない!!

部屋を出て、依里様を探そうとした



微かな物音がして、私は隠れた


依里様が、庭から部屋に戻った


もしかしたら……


見えている???


明らかに前と違う動き


食が細くても、いつも少し食べてた


見えているから、食べなかったのかも


希望の光がさした




慶喜様に知られないよう


外に助けを出そう!!!


そうだわ!!


あの、新選組の土方様なら…





翌朝も食事を食べなかったそうだ

念のため、水にも毒を入れたが

それも飲まなかったと聞いて


やはり、見えていると確信した


そうなると、もしかしたら

耳も回復しているのかも



丈夫な方だわ!!


だけど、早く助ける方法を考えなければ


隙を見て、土方様宛ての文を書いた

いつでも渡せるようにと

懐に入れて持ち歩く


たまに警護でくるから、その時にでも


どうして、慶喜様は依里様を亡き者にしようとなさるのか……


考えていたら、一睡も出来ず


翌朝



大変な騒ぎになった

城中くまなく探すが、依里様のお姿がなかったのだ

依里様の部屋に行くと

私が用意した服とおしめが無かった



さすが!



山猿と言われただけあるわ!!!



依里様は、お子のお命を守る為に

お逃げになったのね!!!











「探せ!!!見つけ出して、殺せ!!!」



恐ろしい人

あの側室様が来てから、慶喜様は変わった

これが本性ならば、私はつかえる主人を

間違えたようね



依里様と、一緒に逃げたかった……




その日、慶喜様に呼ばれた新選組が依里様を探すと聞き

二条城に来た土方様を見つけ、文を渡した



「どうか、依里様を逃がして下さい」



コソッと小声で言った



見つからないうちに、中に戻った






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