私の小さな願い事
~土方歳三~



昼過ぎのこと





「よう!腹減ってねぇか?」




突然、俺の部屋に入って来て

満面に笑みを振りまき、俺を見つめる



この顔に見覚えがあった




あまりにも、人相書きにそっくりで

「高杉晋作」

「土方歳三~ 
俺のこと知っててくれたんだ!!
いやぁ~嬉しいなぁ!!
ほい!依里から歳三への贈り物だ!」

「なっ!?なんだと!?」


依里が…… 長州側にいる?


「稽古の時に、いつもおにぎりと沢庵を歳三にあげてたの!」


依里の真似をして、俺に差し出してくる


「似てねぇよ」

「え~似てるだろ!!」


受け取った握り飯をひとつ

高杉にやり、二人で食う


「依里のことなんだが……
逃がすアテはあるのか?
このまま、俺達と暮らしてもいいが
できれば、争いに巻き込まれないよう
穏やかに暮らせる場所にいさせたい
依里が選ぶことなんだが…
俺と長州に行くか、土方歳三のもとに戻るか……
新選組は、幕臣に取り立てられるそうだな
依里を匿うと、将軍様からお咎めあんだろ
話し合っておこうかと思ってな」



依里の為に、わざわざ屯所に忍び込んだ

こいつは、信用できる男だ


「慶喜様が、依里にしたことは、許せねぇ
新選組としては、忠義を尽くす
だが、土方歳三としては、依里を守りたい
依里と優里を引き取りたいと言ってくれている人がいる
もともと、江戸に行く予定だったんだ
依里に、迎えが来ていると伝えてくれ!」


「わかった
その上で、決めて貰うよ
あくまでも、選択するのは、依里だから
なぁ?依里って、強いのか?」

「俺の弟子だぞ」

「よし、帰ったら手合わせ願おう!!
お前から、何か渡す物あるなら預かるけど」

「さっきの伝えてくれたらいい」

「わかった
話のできる男で良かった
世の流れも、こうして、話し合いができればいいのになぁ
そう、思わんか?」


「そうだな
長州にお前のような男がいて良かった」

「俺は、外れる
労咳でな… 永くないんだ
だから、もしも依里がこちらを選ぶなら
命の限り守ってやる!
そちらを選ぶなら、お前が命をかけてくれ
決断がでたら、また来る
じゃあな!」


高杉晋作となら、良い世が作れそうだ

もったいねぇな…


こんな奴が、労咳なんて




 



つーか、警備どうなってんだ?

真っ昼間に忍び込まれて、どうする






部屋に残る、依里の沢庵の香り





久しぶりだ






六年?

それくらいだよな


相変わらずうめえな





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