私の小さな願い事
船から降りると

地面がぐにゃぐにゃした

「桃!!大丈夫か!?」

高杉に抱きとめられ、目の前に
青空と高杉の顔

「桃!!」

何で?体が動かない

喋ることも、出来ない

私… どうしたの???



体調がよくない高杉が、医者を探して歩く

私を抱えて歩くのは、きついはず


ごめんなさい



このままでは、高杉の寿命が縮む


やっと出会えた医者に私を見せると

労咳の発作が出た

背中を擦ってあげられない


一生懸命、喋ろうと頑張った


「ぁ… ぅ… うぅ… 」



そして…


私は、こんな時に

目も耳も利かなくなった


久しぶりの暗闇と静けさに加え

喋れない

動けない




ごめんなさい



私… 死ぬのかな


丈夫なのが、取り柄だったのに


ん?


んん?



「わぁーーー!!!何してんの!!!あれ?
良かったぁ!!!死ぬかと思った!!
って!!馬鹿!!人の口をなんだと思って
きゃっ!!!」


私を救い出してくれたのは、高杉の口づけ

そして、いつものように腕の中


「桃… 俺より先に逝くとか無しだぞ!!
すげぇ怖かった!!
なんか、わかんねぇけど、口づけしなきゃ
って… してよかったぁーーーー」


「あり…がと…
私も、怖かった…
高杉さん…死ぬのって、怖いね」


ほんの少しだったけど、すごく怖かった


後から聞いたけど


医者から、もう駄目だろうなんて

言われて、よく診てもくれなかったって

それに、労咳が移っては困るからって

追い出された


だから、目が見えた時

青空が眩しくて、腕の中に潜ったの



お日様が兄を思い出させ

歳三と稽古をした、日々を思い出させ

歳三と違う心臓の音に

違和感を感じながらも


そっと、背中に手を回した


高杉が少し震えてて

私が怖がらせたことが申し訳なく思えた





「長生きしような」

「うん」




 

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