私の小さな願い事
依里…


あいつが俺のところに来なくなり

俺は、寺を訪ねた


「あるべき場所に帰りました」


住職は、それ以上語ってくれなくて

どこに引き取られたのか

わからなかった





たった一人の弟子





末っ子だった俺の









依里…




俺のこと、忘れたのか?





数日前のちんちくりんのことを思い出し


依里を思い出し


仕事どころではなかった



「土方さん?芹沢さん達だけ
会津にお呼びがかかったそうですよ?」



総司が知らせてくれた後すぐ



幕府からの使者が来るため

近藤派に集まって欲しいとのこと




広間で、使者を待つ



「お連れしました」




スーーーーッと襖が開き


見ると

ちんちくりんが立っていた



顔を半分隠したまま


だったが、確かに依里に似ていた


「藤原 孝頼(タカヨリ)と申します
先日は、どうも
今日、こちらに来たのは、あなた方が
芹沢をどう思っているのか
伺いたくてね」


声を聞いて、なお確信した


ゆらっと立ち


依里の元に行く




「依里…」

「孝頼です」


ゴンッ


「いでぇぇ!!俺、上司なんだぞ!!」

「うるせぇ!!
黙っていなくなりやがって!!
たとえ上司でも、お前は俺の弟子だろ!!」


俺の拳骨したところをスリスリしながら

見上げて、顔を隠していた布を取ると
にっこり笑う



ガバッ



飛びついてきた依里を抱きとめる

何年ぶりかなのに、軽!!

コイツ、成長してねぇのか?


「歳三!!覚えてくれてたんだ!?」

「当たり前だろ!!」



俺たちは、完璧に感動の再会に浸り

廻りを忘れてた



「土方さんが……」

「甘やかしてる……」

「子供好きとは……」

「呼び捨てでしたね……」



信じられないものを見たみたいに

呟かれた



「依里…お前、何で成長してねぇの?」



そう言うと、ドカッと腹を殴られる



「成長してるし!!十六だぞ!!」


いやいや……


依里の表情は、真面目で嘘ではなさそう



「本当に?」

「歳三に嘘ついたことないだろ!!」






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