私の小さな願い事
それから、二日間

依里は、熱に魘され苦しんだ


優の看病が上手いのは、ずっとそばにいた証だな


「ここ……どこ?あれ?歳三?」

「依里!!俺がわかんのか!?」

「わかるけど?」

「依里様」

「え?……様?えと?誰だ?」


優のことは、覚えたはずなのに、わからなかった

「ここどこだ?」

「新選組だ」


何もわからないと不安がるので
優と大奥で暮らしたこと
京に来て、東宮様に遣えていること


留守居役の男を〝裏切り者…〟


と言っていたことを話した


「会わせて!顔を見ておきたい!」


依里の希望で、顔を見せるべく蔵へ行こうとするが……

「あれ?……なんで?……歳三
俺、立てない……」

「治った訳じゃねぇのか……掴まれ」


依里を抱えて、蔵へ


扉の隙間から、男の顔を見せる


「あいつ… 」


依里が俺の襟をぎゅっと握る


「許せない
あいつ… 
長州に逃げたと聞いたが
幕府の留守居役にまで出世して……
あれ?まてまて……」


部屋に戻る道のり、依里がブツブツ



部屋に戻る頃には、俺に負けないくらいの
眉間の皺


「依里?あいつ、何者だ」


「父と母を殺した奴……だけど、父母って言っても、本物じゃないかも
御庭番衆だったから……
身寄りがなくなって、寺に引き取られた
まさか将軍の妹とか、俺…思ってないし…
歳三…わけわかんねぇよ」


「そりゃ、俺の台詞だ
お前がずっと、俺とか言ってるから
男だと思ってたら、女だ
将軍の妹とか聞いても、依里でしかねぇ
だが… あいつ… 長州と関わりがあるかもしれねぇんだよな?」

「それは、間違いない!大奥を出る前に
頭が言ってたから!」


ずっと黙って聞いていた優が


「依里様のお命を守る為に、寺に引き取られたと聞いております
兄、家茂様が、将軍になり
もう、大丈夫と判断され、奥に戻ることになったのです
依里様のお命を狙ったに違いないわ!!
どうしましょう」



いつになく弱気じゃねぇか……










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